私たちは、世界の始まりに戻ることはできません。この世界に生まれ落ちたとき、すでに戦争や環境破壊、貧困や不平等といった不条理がありました。それだけではありません。生まれの違い、家族との関係、そして選べない環境もまた、私たちに「与えられた」ものであり、その不完全さを背負って生きています。過去を変えられない私たちは、無力なのでしょうか。
そうではありません。私たちには自由意志があります。不完全な世界でも、人は自分で選び、行動を起こし、人生や社会をつくる力を持っています。どんな欠落や制約を抱えていても、それにとらわれることなく未来を生み出す主体であることを、私たちは忘れてはいけません。
与えられた不完全さをただ受け入れるのではなく、一つひとつの欠片を集めて、再び統合し、社会の課題を解決していく努力が大切です。互いに協力しながら解決策を見出し、新しい未来を築くための出発点とする。それが「修復」の営みです。そこから社会に必要な価値や意味を、自分たちの手で積み上げていくことが求められているのです。
しかし、選択と行動には責任が伴います。私たちの前には、希望と繁栄を選ぶ道も、苦しみや破壊を選ぶ道もあります。私たちは世界を変える力を持つと同時に、その選択次第で世界が良くも悪くもなるという現実を突きつけられています。私たちの選択は、個人の幸せだけではなく、社会や未来にもつながっています。どんな世界を作りたいのか、次の世代にどのような世界を渡したいのか、その問いに応える責任が一人ひとりに託されています。
私たちは「受け身の存在」ではありません。自ら動き、世界に働きかけ、未来を創る責任を担った存在なのです。再び世界を統合する営みは、「過去に戻れない」という制約から生まれるものであり、不完全な素材だからこそ、より良い世界をつくることができます。不完全さは私たちに問いかけます。
——「どう生きるのか?」「何を選ぶのか?」と。
私たちはその問いに向き合い、散らばった欠片の中に希望を見出し、世界を再びつくる意志と行動を共にしていきましょう。